ガスクロマトグラフイオン移動度分光計
GC-IMS

大気やプロセスガス中 VOC の迅速・高感度分析
ガスクロマトグラフイオン移動度分光計 GC-IMS は、大気環境やプロセスガス中のVOCやアンモニアなど 特定成分をオンサイトで迅速に測定するのに適したシステムです。ポンプと6ポートバルブを内蔵し、 ガスサンプルの手動・自動サンプリングに対応しています。ポータブルでオンサイト分析に適した頑丈な構造です。

測定結果は、タッチスクリーン上に表示されるほか、アナログ出力、Ethernet、USB を介して転送することができます。サーキュラーガスフローユニット CGFU(オプション)を追加ことで、使用するガス消費を抑えられ、かつ可搬性が一層高まります。
GC-IMS の原理

高速 GC と高感度 IMS の技術を掛け合わせたGC-IMSは、ドリフト電圧の極性の切り替えにより、ケトン、アルデヒド、アルコール、エーテル、エステル、アミン、芳香族化合物、有機リン化合物、 有機硫黄化合物、有機窒素化合物、ハロゲン化合物など広範囲にわたる化合物の検出が可能です。IMS への試料導入前に GC による分離を行うことで、複合成分のイオン間の相互作用が低減し、 さらに GC 保持指標とイオン移動度の各々データベースを利用した化合物の絞り込み(クロスサーチ)が可能となりました。
GC-IMS の主なアプリケーション
- プロセスコントロール(バイオガス中のシロキサン、フィルタ効率)
- 天然ガス中の臭気物質の定量(THT, Gasodor-S-Free)
- 最終製品の管理(溶媒中の不純物、製品からの異臭)
- 排気ガスのオンラインモニタリング
- 中間製品の品質管理(化学産業)
- クリーンルームモニタリング(NH3, HCL)
- 有害化学物質(硫酸ジメチル等)の最大許容濃度の管理
- 車室内VOCの定量
特定成分の検出と定量

5~140 ppb の硫酸ジメチル(DMS)の IMSスペクトル(左)/5~140 ppb のDMS の検量線(右)
車室内VOCの定量

GC-IMSを用いて、新車臭ともいわれる車室内の有害なVOCの定量を試みました。アセトアルデヒド、アクロレイン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o-, m-, p-キシレンおよびスチレンを5ppbレベルの低濃度で、アクロレインやアセトアルデヒドなどいくつかの成分に関してはpptレベルでの定量が可能であり、システムの高い検出感度が証明されました。


上記の複数のVOC成分の測定サイクルは、わずか15分以内と大変短く、分析のハイスループットを提供します。1~200ppbの範囲で検量線を作成でき、その標準偏差は2%以内と再現性にも優れていました。
バイオガス中のシロキサンのモニタリング
燃焼機関に供給する代替燃料として活用されているバイオガスは、農業廃棄物、植物材料、下水、汚泥や食品残渣などから製造され、メタン(CH4)と二酸化炭素(CO2)が主な成分です。しかし、洗浄剤やスキンケア製品等からの廃棄物中にシリコン含有材料が存在する場合、シロキサン(直鎖および環状分構造)が生成されます。埋立地や下水からのガスにみられる典型的なシロキサンは下記の通りです。
L2 | ヘキサメチルジシロキサン(Hexamethyldisiloxane) |
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L3 | オクタメチルトリシロキサン(Octamethyltrisiloxane) |
L4 | デカメチルテトラシロキサン(Decamethyltetrasiloxane) |
L5 | ドデカメチルペンタシロキサン(Dodecamethylpentasiloxane) |
D3 | ヘキサメチルシクロトリシロキサン(Hexamethylcyclotrisiloxane) |
D4 | オクタメチルシクロテトラシロキサン(Octamethylcyclotetrasiloxane) |
D5 | デカメチルシクロペンタシロキサン(Decamethylcyclopentasiloxane) |
D6 | ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(Dodecamethylcyclohexasiloxane) |
バイオガスが、発電設備の燃料として天然ガスパイプラインを流れる際、ガス中のシロキサン量が臨界レベルを超えると、燃焼プロセス中に二酸化ケイ素がエンジン内面に付着し、特にバルブやピストンのような可動部品の損傷を引き起こします。従って、バイオガス中のシロキサン濃度を制御することが非常に重要です。
シロキサンの濃度測定に、TD-GC-MSのような既存の手法を用いると、非常に時間がかかり、効率的ではありません。GC-IMS であれば、バイオガスの生成設備でガスパイプを直接バイパスしたラインから、低濃度のシロキサンおよび全ケイ素を0.03
mg/m3(5ppb)の高感度で連続モニタリングが可能です。分析時間は短く(L5までで35分、D6を含む場合で60分)、サンプルラインは常に窒素でパージされることで、感度が保証されます。

各シロキサンのIMSスペクトル(左)、2種のシロキサンの検量線(右)

埋立地にオンサイトで設置されているGC-IMS-SILOX(左)、GC-IMS-SILOX結果画面(右): 各シロキサン、全シロキサン量などが直接定量されます。
アセトアルデヒドのモニタリング

アセトアルデヒド(C2H4O)は、ヒトの健康に重大な障害を引き起こす可能性があり、国際がん研究機関(IARC)により、発癌性が認められる化学物質としてグループ1に分類されています。
しかしながら、アセトアルデヒドはPETボトルの可塑剤など様々な化学合成のための基剤として含まれており、健康被害や感覚的にネガティブな印象(異味、異臭)を避けるために、濃度の監視が必要となります。
GC-IMSでは、アセトアルデヒドを選択的に高感度(5ppbレベル)で、かつ迅速(5分サイクル)に測定することができます。プロセス管理を目的としたアセトアルデヒド専用機も用意しており、設定濃度を越えた場合に即座にアラームで知ることができます。