食品偽装の問題は、消費者の信頼を大きく揺るがす重大な課題です。また偽装によって健康被害やアレルギー問題を引き起こすリスクもあり、食品業界では品質保証や偽装防止のための迅速かつ高感度で信頼性の高い検査ツールが求められています。
たとえば、近年ではイタリアの研究チームがブラックペッパーの真偽を見極めるために「ガスクロマトグラフ・イオン移動度分光計(GC-IMS)」を活用し、その有用性を検証した結果が報告されています。
GC-IMS×機械学習でブラックペッパーを迅速検証
8カ国・3大陸から集められた正規品のブラックペッパーをベースに、不正な混入物を加えたサンプルを調製し、GC-IMSと機械学習を組み合わせて合計99サンプルの分析を実施しました。この方法ではサンプル準備が不要で、分析時間はわずか20分と非常に短いのが特徴です。
得られたデータをもとに、部分的最小二乗判別分析(PLS-DA)とサポートベクターマシン(SVM)の2つの機械学習アルゴリズムを適用したところ、90%以上の高い正答率で品質を分類することができました。
この結果から、以下のような応用可能性が提案されています。
- 新規ロットの検証による意思決定支援
食品生産ラインで新たなブラックペッパーが正規品かを迅速に判断でき、混入を防ぐことが可能です。 - 従来の時間を要する分析の代替手段
短時間で大量のサンプルを検証できるため、検査効率が飛躍的に向上します。 - 長期間にわたる安定した分析
異なるオペレーターや長期間の分析においてもその精度に影響はありません。
GC-IMSは、ブラックペッパーに限らず、食品産業における品質管理の新たなスタンダードとなる可能性を秘めています。この技術が機械学習と組み合わされることで、より効率的で正確な検査体制を構築することが期待されます!
参考論文:Carmela Zacometti, Giuseppe Sammarco, Andrea Massaro, Stephane Lefevre, Aline Frégière-Salomon, Jean-Louis Lafeuille, Ingrid Fiordaliso Candalino, Roberto Piro, Alessandra Tata, Michele Suman,
Authenticity assessment of ground black pepper by combining headspace gas-chromatography ion mobility spectrometry and machine learning,
Food Research International, Volume 179, 2024, 114023, ISSN 0963-9969