炎症性腸疾患(IBD)と聞くと、多くの人は内視鏡や組織検査の負担を思い浮かべるかもしれません。しかし、最新の研究によって、この診断プロセスが非侵襲的で迅速、そしてより手軽なものになる可能性が見えてきました。その鍵を握るのが、「イオン分子反応質量分析計」を使った肺胞呼吸中の揮発性有機化合物(VOC)の分析です。
この研究では、小児IBD患者の呼気に含まれるVOCの特定パターンを調べることで、対照群との違いを明らかにしました。クローン病(CD)や潰瘍性大腸炎(UC)といった異なるIBDタイプの判別も可能です。この分析法は、IBDの診断や分類に必要なVOCの「指紋」を作成するだけでなく、その精度も非常に高い結果を示しています。驚くべきことに、感度は94%以上、特異度も65%以上と、これまでの方法と比べて大きな進歩を遂げています。
VOC分析は非侵襲的で迅速に行えるため、特に小児患者にとって大きな恩恵をもたらします。また、この方法によってIBDの病因に関する新たな手がかりが得られる可能性もあり、診断を超えて病態理解や治療開発にも貢献が期待されています。
未来のIBD診断は、「呼吸をするだけ」で完結するかもしれません。イオン分子反応質量分析計が描くその可能性に、注目が集まっています!
参考論文:Monasta L, Pierobon C, Princivalle A, Martelossi S, Marcuzzi A, Pasini F, Perbellini L. Inflammatory bowel disease and patterns of volatile organic compounds in the exhaled breath of children: A case-control study using Ion Molecule Reaction-Mass Spectrometry. PLoS One. 2017 Aug 31;12(8):e0184118. doi: 10.1371/journal.pone.0184118. PMID: 28859138; PMCID: PMC5578606.