急性虫垂炎の診断といえば、一般的には臨床症状の確認や画像診断が中心ですが、新しい可能性として「呼気分析」が注目されています。
メドウェイ・マリタイム病院(イギリス)等グループの研究では、呼吸中の揮発性化合物(VC)の分析を通じて、急性虫垂炎を診断できるかどうかを探りました。そして、その分析には「イオン分子反応質量分析計」が用いられました。
研究対象は、急性虫垂炎患者、腹部手術を予定している対照患者、そして診断では虫垂炎が疑われたものの組織学的には正常だった患者の3グループ。
呼吸サンプルから得られたデータを解析したところ、特定のVC、例えばアセトンやイソプロパノール、プロパノールなどが急性虫垂炎患者と対照群で異なるパターンを示すことが分かりました。
また、腹腔内から採取したサンプルとも関連が見られ、特定のVCが腹腔内感染症に特有である可能性が示唆されています。
さらに、主成分分析を活用することで、虫垂炎患者と対照群を識別する鍵となる化合物を特定することにも成功しました。
この結果は、非侵襲的で簡便な診断法の可能性を開くものであり、特に緊急時の診断ツールとして期待が寄せられています。
もちろん、背景要因や微生物との関連性を深く掘り下げる必要はありますが、呼気分析は診断だけでなく、感染症の新たな理解や治療の方向性を示す重要な手がかりになるかもしれません。
未来の診断法として、呼吸一つで病気を見抜く日がやってくるのもそう遠くはないのかもしれません!
参考論文:Andrews BT, Das P, Denzer W, Ritchie GA, Peverall R, Hamade AM, Hancock G. Breath testing for intra-abdominal infection: appendicitis, a preliminary study. J Breath Res. 2020 Oct 22;15(1):016002. doi: 10.1088/1752-7163/abba88. PMID: 33089830.